いせ市民活動センター設置ヴィジョン

市民参画、協働、よりよい伊勢志摩づくりをめざして

平成15年9月

伊勢市市民活動センター(仮称)検討委員会


はじめに

伊勢市市民活動センター(仮称)検討委員会では、伊勢市が『いせ市民活動センター』を設置することを受け、準備会を含めて、合計12回の会議を開催し、討議を重ねて参りました。

また、他地域センターの施設、運営手法、予算執行の状況など、独自に調査、研究を行い、実際に現地に赴き、関係者の聞き取りにより、各地センターの現状把握に努めました。

これまでの検討過程を踏まえ、わたしたちの考えを「いせ市民活動センター設置ヴィジョン」としてまとめました。

平成16年度本格オープンする『いせ市民活動センター』設置計画と実施において実現されることを提案いたします。

伊勢市市民活動センター(仮称)検討委員会一同


1.伊勢市における市民活動の現状と課題

-1.市民活動の現状

伊勢志摩地域の市民活動は、現在も各団体が活発な活動を続け、各自に公益活動を行っている。その活動状況は、県内他地域に比べても遜色なく、伊勢市民の中にも市民活動が地域社会に必要であるという認識は根付いてきている。

しかし、反面、市民活動に参加する住民や事業への協力、寄付は一定数で伸び悩み、新規スタッフ確保、新たな資金調達や事業展開を図ることができない等、組織が未成熟ゆえの弱点も多く見受けられる。

-2.市民活動の具体的課題

伊勢志摩地域の市民活動の具体的課題としては、次のようなことがあげられる。

1)発信力の弱さ[広報およびプレゼンテーション]

良い事業をしていても、外部に事業や組織を説明することに無関心、あるいは苦手とする団体が多い。

結果的に、広く一般に伝えることができず、また、理解や共感を得られにくいことから、事業が拡がらない。

原因として、組織が未成熟なため自らの事業を客観視したり、公共的意義(ミッション)を明確にできていないことや、プレゼンテーションのためのスキルやノウハウを持っていないことが考えられる。

2)人材や連携の不足[組織間(他団体、他セクター)の協働]

市民活動団体は、通常、それぞれの事業で手一杯であり、他団体・他セクターとの協力体制をとる余裕がない。個人レベルでは、他団体・他セクターとのネットワークを持っていることもあるが、組織として、協働して事業展開することができずにいる。

その結果、互いに孤立した団体では、利用者や協力者が固定化する傾向にあり、事業も一定規模から脱することなく、社会的な波及も限られ、伊勢志摩地域の公益事業全体に閉塞感を生み出している。

また、行政との連携や組織間の協働の経験不足、互いの手法や組織規模の違い、コミュニケーションの不足等が原因となり、事業実施段階での協働による相乗効果が得られにくい。

3)提言力の弱さ[行政と市民活動団体との関係]

伊勢志摩地域の市民活動は、事業型が多く、それぞれ地域や社会のニーズや課題に基づき、真摯に取り組んでいるものの、社会全体に訴えかけ、よりよい社会づくり、あるいは、課題解決のための枠組みづくりを、自ら提案するまでに至っていない。

そのため、社会的に、市民活動が無償奉仕、あるいは安価な労働力として、行政の下請け的存在であるかのように錯覚されがちである。

政策への関与や提言力が弱いことにより、本来、市民活動の持っている特性(先駆性、柔軟性、機動力など)が、社会システムの中でうまく活かされず、地域づくりのパートナーとしてのポテンシャルを発揮できずにいる。



2.市民活動センターの設置理念と望まれる役割、機能

-1.市民活動センターの設置理念

 

『いせ市民活動センター』は、市民活動を行う上で必要となる施設・設備、情報の提供を行うことで、市民活動への参加の機会を増進し、市民の社会参画意識を啓発するとともに、市民活動団体の事業基盤の整備・強化を支援するために、人材育成に努め、他団体・他セクターとの連携や資源等の仲介を行い、もって伊勢志摩地域における市民活動の促進と活性化を図ることを目的として設置されなければならない。

最終的な到達点として、市民一人ひとりの「市民力の向上」と、それら市民を巻き込んだ「市民参画」による伊勢志摩づくり、および新たな社会システムの構築を目指すものである。


[市民活動を支援する5つの柱]

1)知る(理解する)

市民活動について、積極的に市民に情報を提供し、理解を深める。

2)行う(参加する)

市民活動を行うにあたり必要となる会合、作業等の場所、設備、

情報を提供し、市民活動への参加の機会を増やす。

3)応援する(支援)

各市民活動団体の持つ課題に対して相談に応じ、課題解決を

支援する。また、市民活動に関する地域全体の課題を調査、研究

し、提言を行う。

4)つなぐ(協働)

市民活動団体が事業実施において必要となる他分野、他セクター

(行政、企業)、地域資源とのコーディネートを行う。

5)アピールする(啓発)

地域社会や行政に対して、市民活動への理解をうながし、活動の

環境づくりを行う。


-2.市民活動センターに求められる役割

『いせ市民活動センター』は、それ自体がまちの主役となるものではなく、利用する市民活動団体が主役となるための「黒子」的存在でなくてはならない。

また、市民活動における社会的な変化を敏感に察知し、市民活動に関する地域課題の調査、研究に努め、市民活動団体と地域の資源(人、モノ、資金、情報)をコーディネートすることが望まれる。

そして、市民活動が、地域や社会に貢献するものであることをアピールし、認知を深めつつ、市民活動に参加する市民が、より活動しやすい環境づくりに尽力することが求められる。

-3.市民活動センターに望まれる機能

 前述の市民活動の課題を踏まえ、『いせ市民活動センター』が、持つべき機能を、大枠として、以下の3つに分類する。

1)情報提供(発信力の強化)

『いせ市民活動センター』が、市民活動の拠点として、総合的に市民活動に関する情報を提供し、かつ地域社会へと発信する。

また、市民活動団体がそれぞれの発信力を高めるためのサポートを行う。

2)市民活動団体への啓発とマネジメント支援(人材と連携の強化)

市民活動団体および構成員一人ひとりが、事業を行う上で求められる資質を高め、組織運営を担うことができるスキルやノウハウを提供する。

同時に、他団体・他セクターとの連携をサポートし、市民活動団体の事業拡充のために必要な資源(人、モノ、資金、情報)をコーディネートする。

3)行政と市民活動団体との関係の強化(提言力の強化)

 行政の市民活動への認識を深め、行政と市民活動をつなぐ。

 また、市民活動団体の事業の成果や社会貢献度を公表し、社会的地位を高めるとともに、社会的発言力を強化する。



3.ヴィジョン実現のためのロードマップ(計画)*[ ]内は、想定される事業評価指標

 本計画は、社会情勢や伊勢志摩の市民活動団体の成長にあわせて、
短期計画は1年ごと、中・長期計画は、3年を目処に見直されることが望ましい。

-1.第1段階:市民への情報提供《短期計画》

1)センターの機能を知ってもらい、活用してもらう
(センターそのものをPRする)

[市民への広報数、メディア露出度、来所者数、稼働率]

2)情報発信の場として利用を高める
(市民活動団体のPRの場を提供する)

[センターへの紙ベース、e-mail、口コミ等情報持ち込み数]

3)市民活動をしている人たちのための情報発信(番組づくり)
(情報発信能力の向上支援事業を実施する)

[センターからの紙ベース、e-mail、Web等情報発信数]

-2.第2段階:市民活動団体のマネジメント支援《短・中期計画》

1)市民活動をしている人たちへの啓発プログラムの提供
(プレゼンテーション講座や会計講座、活動相談会などの支援・向上事業)

2)次世代啓発プログラム(子供たちの自己啓発やボランティアプログラムなど)の作成支援
(市民啓発プログラム作りの大切さをPR、啓発スキルのトレーニングの場つくり(例えば活動団体交流会」など)

[各プログラム実施回数、参加者数、参加者満足度、参加団体のスタッ

 フ数、参加団体の地域での自主講座開催数]

3)次世代の市民活動につなげるための実践の場の提供
(学校の総合学習枠の一括確保と各団体へのコーディネートやその他地域活動との連携支援など)

4)補助金、寄付、自主事業など、経済力の強化への助言

5)市民活動に関する地域課題の調査・研究

[各団体の新規事業実施数、新事業開拓数、事業・組織の連携数]


-3.第3段階:行政と市民による新しい社会システムの創造

《中・長期計画》

1)行政職員への市民活動についての啓発

2)行政と市民活動団体とのパートナーシップの構築

3)市民活動センターの運用、効果、コストパフォーマンスの公表

4)市民活動団体による政策提言活動の支援

5)NPO施策への提言
[行政と市民活動団体との協働事業数、政策提言数、市民活動センター

の総合評価]



4.市民活動センター運営における問題点

-1.財政

伊勢市は、市民活動センターの設置において、「官設民営」の方針であり、『いせ市民活動センター』は、民(市民活動団体)による自主自立の運営を目指す必要がある。

しかし、現状では、伊勢志摩地域において市民活動団体に寄付・参加する市民・企業の絶対数などを考慮すれば、市民活動団体からの中間支援事業への需要は少なく、自主運営が可能となるほどの収益は見込めない。

現段階では、中間支援事業だけでの『いせ市民活動センター』の自主自立運営は不可能であると言わざるを得ない。

-2.組織間の連携

現在、市民活動団体は、分野を統括する行政システムによって隔てられており、『いせ市民活動センター』の設置や運営団体によるコーディネートだけでは、協働をつないでいくパイプ役として充分とはいえない。

学習が主な活動である団体も社会貢献の能力を持っており、市民活動団体も教育の分野に協力し得る。また、福祉団体が「福祉」と「市民活動」に分断されることがあってはならない。

それらは、システムとして定着しており、市民だけの働きかけで変えていくことは難しい。



5.市民活動センター運営への提言

市民活動を活性化するということは、とりもなおさず、地域において、市民の自発性を高め、社会への意識を喚起し、社会参画をうながすという重い使命を負っている。

それは、これからの地方自治において、市民参画での行政経営を考えるにあたり、公益を担うパートナー育成という行政の課題でもある。

単なる経費削減のための安価な労働の提供者としてとらえるのではなく、行政と市民が互いの持つ特性を理解した上で、よりよい効果を地域や社会にもたらすためのパートナーシップでなくてはならない。

『いせ市民活動センター』運営においても、「民営」である以上、「行政」にはない「民」の特性を活かした運営となることが望ましい。

また、市民活動センター運営の財政の脆弱さを鑑み、当事業を伊勢市における社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の培養と位置づけ、公益増進の投資として、中間支援事業への応分の予算配分をお願いするとともに、運営団体による自主事業を支援し、将来、自主財源による運営が可能となるべく配慮されたい。

そして、今後、運営団体と共に、行政の所管を越え、社会福祉協議会、教育委員会、自治組織等地域の重要なファクターと市民活動が連携し、地域や社会のために協働することのできる社会システムの構築を望むものである。

伊勢市行政の市民活動センターへの積極的な関わりを期待する。